「飲酒運転は危険」という認識は広く浸透していますが、
実は睡眠不足の状態で運転することも、判断力や注意力、反応速度を低下させ、
重大な事故につながる危険があります。
ただし、「睡眠不足の運転のほうが飲酒運転より危険」
と一律に断定することはできません。
飲酒量や睡眠不足の程度、運転時間などによって危険度は変わります。
そのうえで、睡眠不足運転がなぜ危険なのかを考えてみましょう。

飲酒運転より危険?睡眠不足で運転することの本当の怖さ
「昨日はあまり眠っていないけれど、車を運転しなければならない・・・」
そんな経験をしたことはありませんか?
飲酒運転であれば「お酒を飲んだから運転してはいけない」と判断できます。
しかし、睡眠不足の場合は、「少し眠いだけだから大丈夫・・・」
「コーヒーを飲めば何とかなる・・・」と考えてしまいがちです。
ところが、睡眠不足は運転に必要な注意力、判断力、反応速度、
集中力などを低下させることがあります。
厚生労働省も、睡眠不足による日中の強い眠気や注意力・集中力の低下が、
居眠り運転などの重大な事故につながる可能性を指摘しています。
睡眠不足になると判断力が低下する
車の運転では、常にたくさんの情報を処理しています。
前方の車、対向車、歩行者、信号、標識、交差点、自転車などを同時に確認し、
その状況に応じてアクセルやブレーキ、ハンドルを操作しなければなりません。
睡眠不足になると、こうした情報処理能力が低下し、危険を発見するのが遅れる、
判断に時間がかかる、操作が遅れるといった問題が起こりやすくなります。
例えば、前方の車が急ブレーキを踏んだとき。
十分に睡眠を取っていれば、
「危ない」と判断してすぐにブレーキを踏めるかもしれません。
しかし睡眠不足では、危険を認識するまでの時間が長くなったり、
判断が遅れたりする可能性があります。
ほんの一瞬の遅れでも、車はその間に何メートルも進んでしまいます。
最も怖いのが「瞬間的な居眠り」
睡眠不足の運転で特に注意したいのが、瞬間的な居眠りです。
眠気が強くなると、「完全に眠ってしまう」という状態だけではなく、
ほんの短い時間だけ意識や注意が途切れることがあります。
いわゆる「マイクロスリープ」と呼ばれる現象です。
本人は「寝ていた」という自覚がない場合もあります。
しかし、その数秒にも満たないような短い時間に、車はかなりの距離を進みます。
例えば時速60kmで走っている車は、1秒間に約16.7m進みます。
わずか数秒間、注意が途切れるだけでも、道路上では大きな距離になります。
その間に車線を逸脱したり、前方車両に接近したり、
信号や歩行者を見落としたりすれば、重大事故につながる可能性があります。
「眠くなったら頑張る」は危険
睡眠不足の怖いところは、自分では「まだ運転できる」と思ってしまうことです。
厚生労働省によれば、睡眠不足が長引くと、
眠気そのものを自覚しにくくなることもあります。
つまり、本人の「眠くない」という感覚だけでは、
安全な状態かどうかを十分に判断できない場合があります。
「窓を開ける」「音楽を大きくする」「ガムを噛む」「コーヒーを飲む」
こうした方法で一時的に眠気を紛らわせることはできても、
睡眠不足そのものを解消するものではありません。
眠気を感じながら運転を続けること自体が危険なのです。
睡眠6時間未満にも注意
睡眠時間と交通事故との関連も指摘されています。
厚生労働省の資料では、日本の交通事故を起こした運転者を対象とした研究で、
夜間睡眠が6時間未満の場合、
追突事故や自損事故の頻度が高かったことが紹介されています。
また、睡眠時間を短く制限した研究では、睡眠時間の短縮によって眠気が増し、
注意力が低下することが示されています。
もちろん、必要な睡眠時間には個人差があります。
「6時間寝れば必ず安全」という意味でも、
「5時間なら必ず事故を起こす」という意味でもありません。
重要なのは、自分にとって十分な睡眠を確保し、
強い眠気がある状態で運転しないことです。
飲酒運転と睡眠不足運転はどちらも避ける
飲酒運転は、アルコールによって注意力や判断力、反応時間などが
低下することが明らかになっています。
警察庁も、飲酒によって危険の察知が遅れたり、
ブレーキを踏むまでの時間が長くなったりする危険性を説明しています。
一方、睡眠不足でも眠気や注意力低下が起こり、
居眠り運転につながる可能性があります。
つまり、飲酒しているから危険なのではなく、運転に必要な脳の機能が
十分に働いていない状態そのものが危険と考えることが大切です。
「お酒を飲んでいないから大丈夫」とは限りません。
「眠気を感じたら運転をやめる」が基本
長距離運転では、あらかじめ休憩場所を決めておくことも大切です。
警察庁の運転者向け資料でも、長時間運転するときは2時間に1回程度の休息を取り、
眠気を感じた場合には速やかに休息を取って、
眠気を覚ましてから運転するよう示されています。
疲労や体調不良で注意力・判断力が低下しているときは、
運転を控えることも重要です。
特に、
・前日の睡眠時間が極端に短い
・何度もあくびが出る
・まぶたが重い
・集中できない
・直前の数分間の運転をよく覚えていない
・車線をふらつく
・信号や標識を見落としそうになる
このような状態なら、「もう少しだけ」と運転を続けないことが重要です。
睡眠は「健康」のためだけではない
睡眠というと、
美容や疲労回復、生活習慣病予防などの健康面ばかりが注目されがちです。
しかし、睡眠は安全に生活するための重要な土台でもあります。
十分に眠ることは、翌日の仕事や家事のパフォーマンスだけでなく、
車の運転に必要な集中力や判断力を保つことにもつながります。
飲酒運転をしないことは当然ですが、それと同じように、
「眠いけれど、運転しなければならない」状態を作らないこと。
これも交通事故を防ぐための大切な習慣です。
「少しくらい寝不足でも大丈夫」という油断が、
取り返しのつかない事故につながる可能性があります。
車を運転するときは、アルコールだけでなく、
自分の睡眠状態と疲労状態にも目を向けること。
それが自分自身だけでなく、
同乗者や歩行者、他のドライバーの命を守ることにもつながります。
