「筋力トレーニングの強度、量、頻度、フォームなど、内容に間違いはないのに、
全然筋肉がついてくれない・・・」という話をよく聞きます。
その原因は、筋トレ後の「休息」と「栄養補給」に問題があるのかもしれません。
筋力トレーニング後の筋肉は、バーベル、ダンベル、マシンなどの負荷による
ストレスから筋線維の構造がプチプチと崩れた状態になり、
大げさに言うと「筋肉が破壊される」ということになります。
しかし、筋肉がこうした状態になっても、
損傷した部分を補修する小さな筋サテライト細胞というものが存在し、
その筋サテライト細胞が増殖して、プチプチと崩れた構造を修復して
筋肉の再生を始めます。
また、筋線維が完全に切れてしまった時は、さらに増殖して新しい筋線維を作ります。
筋サテライト細胞による筋線維の修復法は、損傷した部分に
ベタベタと張り付くようなかたちで筋線維1本を太くして、
再び同じようなストレスがかかっても耐えられるように、
筋力トレーニング前よりパワーアップするように再生します。
筋肉の持つパワーは、筋肉の断面積に比例するので、
修復されて以前より太くなった筋肉はパワーアップしたことになるわけです。
この現象は「超回復」と呼ばれ、筋力トレーニングは、
この「超回復」を起こすことが目的になります。
しかし、実際、超回復によるパワーの差は、超微々たるもので、
今日のベンチプレスで100kg上がったから、
次回のベンチプレスで101kg上がるというものではありません。
それでも、超回復によるパワーアップを信じてコツコツと頑張って
筋力トレーニングを積み重ねていけば数ヵ月後には、
ハッキリとした数字にあらわれてきます。
そして、この超回復を起こすために絶対必要なのが「休息」と「栄養補給」です。
いくらハードな筋力トレーニングを頑張っても
「休息」と「栄養補給」が不足していては何の効果も得られませんので、
筋肉がつくということもありません。
筋肉の回復時間は、筋力トレーニングの強度や量によりますが、
基本的には最低48~72時間といわれています。
ですが、初めてのトレーニング方法で、超ハードに行ったような場合は、
1週間以上の休息が必要とすることもあり、
逆に、やり慣れている軽いトレーニングなら48時間で
十分ということもありますので、単純に休息時間を断定することはできません。
もし、十分な休息を取らずに同じ部分の筋肉を鍛えたとしても、
筋力のパワーレベルは最低で、筋肉の成長も期待できません。
逆に、休息が長すぎて、ある一定の時間が過ぎると、
筋力のパワーレベルは筋力トレーニング前に戻ってしまいます。
そして、「休息」と同じくらい重要なのが「栄養補給」です。
破壊された筋線維を修復するために、その材料となるタンパク質が必要となるわけで、
体内の栄養素が不十分だと超回復が起こりませんし、
当然、筋力トレーニングの効果も上がりません。
もともと健康的な体を維持するには、1日のタンパク質摂取量として、
体重1キログラムに対して、最低でも1.1グラム以上といわれています。
これが、筋力トレーニングをしている人になると、
体重1キログラムに対して1.5グラム以上になり、
特に、筋力トレーニング後の1時間以内にタンパク質を摂取することが
有効とされています。
例えば、体重60キロで、一般的なレベルの筋力トレーニングをしている人であれば、
1日に90グラムのタンパク質を摂る必要があるということです。
ただし、一気に必要量のタンパク質を摂るのではなく、
こまめに摂ることが大切です。
しかし、肉料理などからばかりタンパク質を摂取していると、
どうしても必要以上に脂肪分を摂ることになり、
カロリーオーバーになってしまいます。
そこで、多くの人が利用しているのが、低カロリーでビタミン類やミネラル類も
配合して栄養バランスがよく、吸収もよいという
プロテインパウダーのサプリメントです。
「プロテイン」とは、タンパク質のことで、牛乳、卵、大豆などから
タンパク質だけを抽出して粉末状にし、サプリメントとして市販されています。
その中には、牛乳を原料とした
動物性タンパク質の「ホエイプロテイン」「カゼインプロテイン」と、
大豆を原料とした植物性タンパク質の「ソイプロテイン」の2種類に
大きく分けられ、それぞれの特徴があります。
「ホエイプロテイン」は、吸収性がいいのでトレーニング前後に、
「カゼインプロテイン」は、吸収は遅い分、長時間作用するので空腹時や就寝前に、
「ソイプロテイン」は、抗酸化作用やコレステロールを下げる効果があるので、
ダイエット中の人や美容に意識の高い女性にオススメとなります。
そして、最高のトレーニング効果を期待するなら、
良質なタンパク質を十分に摂ることです。
タンパク質は、炭水化物、脂質とともに「三大栄養素」の一つになり、
人間として生きていくうえで絶対に欠かすことのできない栄養素で、
筋肉をはじめ、内臓、血管、皮膚、髪、爪など、
体のほとんどの部分がタンパク質でできています。
そんなタンパク質が含まれた食材を食べると、胃や腸で一旦、アミノ酸に分解され、
その後、それぞれ必要な部位へ送られてタンパク質として再合成されます。
こうして体の各部位へ送られて作られるタンパク質の種類は、
10万種類もあるといわれ、しかも、それらを構成しているのが、
たった20種類のアミノ酸の組み合わせから作られるという驚きの栄養素です。
そのアミノ酸は、タンパク質の最小単位になるわけですが、
その種類は、わずか20種類しかありません。
ですが、この20種類のアミノ酸を含むバランスによって、
そのタンパク質の特徴が違ってきます。
この20種類のアミノ酸の中で、体内で合成することのできないものを
必須アミノ酸といい、イソロシン、ロイシン、リジン、メチオニン、
フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、
ヒスチジンの9種類になります。
一方、チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、
グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、
アルギニンの11種類が非必須アミノ酸となります。
そして、このアミノ酸がバランスよく含まれ、
特に、必須アミノ酸が十分に含まれているタンパク質が良質のタンパク質となります。
ですが、通常では、ある食品の中に、どのくらいの量のタンパク質が
含まれているのか分かっても、アミノ酸の含まれるバランスまでは分かりません。
そこで便利なのが、必須アミノ酸の含有率をわかりやすく数値化して示している
「アミノ酸スコア」です。
100に近いほどアミノ酸のバランスがよく、良質なタンパク質となりますので、
プロテインのサプリメントを購入する時は「アミノ酸スコア100」
という表示を確認しましょう。
筋力トレーニングは強度、量、頻度、フォームなどをしっかり考えたプログラムが
大切ですが、それと同時に「休息」と「栄養補給」も重要となります。
「頑張って筋トレしているのに、全然筋肉がつかない・・・」と感じている人は、
「休息」と「栄養補給」をしっかり見直してみましょう。